売却時の税金

住宅譲渡損失の損益通算、繰越控除の特例

1.住宅譲渡損失の繰越控除の特例とは

居住用資産を売却して損失が出た場合には、住宅譲渡損失の損益通算や繰越控除の特例を受けることができます。

具体的には、5年を超えて所有していた居住用の不動産を売却して損失が発生したとき、その損失を、同じ年の他の所得と損益通算することができます。
また、損益通算をしても引ききれなかった分については、翌年度以降、3年間繰り越し所得控除することができるというものです。

2.居住用資産買換えのケース

平成29年12月31日までに居住用資産を売却した損失が出た場合、以下のような条件を満たすと特例の適用を受けることができます。

1)売却する不動産の条件
  • 不動産の所有期間が、売却年の1月1日現在において5年を超えている
  • 売却した不動産に譲渡損失が発生している
  • 土地面積が500m²以上の場合、500m²までの損失が適用限度となる
2)買いかえる不動産の条件
  • 以前の不動産を売却し、翌年の12月31日までに新住居をローンによって購入する
  • 買い換える不動産を先行取得する場合には、翌年の12月31日までに以前の不動産を売却する
  • 購入する不動産については、床面積の50m²以上を居住用とする
  • 購入後の新居のローンは、10年以上の融資期間とし、特例を受ける年の年末時点で残債がある
3)所得制限など
  • 特例を受ける年(3年が限度)の所得が3,000万円以下
    なお、「住宅ローン減税制度」とは、併用可能です。

3.具体例

平成23年8月に5,000万円でマンションを購入し、平成29年12月に3,000万円で売却して、5,000万円の新居を購入した。
買換費用に100万円かかった。
購入後のローンは2,000万円。
平成29、30、31、32年の所得は800万円、所得控除が190万円、所得税は79万2,500円

住宅譲渡損失の計算

3,000万円(売却代金)-5,000万円-100万円=2,100万円
(建物の減価償却費は、計算簡略化のためここでは考慮していません。)

平成29年度の所得税

800万円-2,100万円=-1,300万円(損益通算)
マイナスになるので、所得税として、79万2,500円の全額が還付されます。
また、損益通算によって1,300万円が「繰越譲渡損失」となり、翌年に繰り越されます。

平成30年度の所得税

800万円-1,300万円=-500万円(損益通算)
マイナスになるので、所得税は、79万2,500円全額が還付されます。

平成31年度の所得税

800万円-500万円=300万円
この年は、300万円に対して所得税が課税されますが、ここから190万円が控除されるので、課税対象所得は110万円となります。
その場合の所得税は55,000円ですから、
この年の所得税は68万7,500円が還付されます。

4.居住用資産を譲渡したケース

平成29年12月31日までに居住用不動産を譲渡すると、以下のようなケースで譲渡損失の繰越控除の特例を受けることができます。

1)適用条件
  • 不動産の所有期間が売却年の1月1日現在において、5年を超えている
  • ①譲渡損失が発生している(譲渡損失)、または②売買契約の締結日の前日に住宅ローンの残 債があり、その金額が売却金額をオーバーしている(売却後もローンの残債が残る)
2)所得制限など

特例を受ける年(3年間)の所得が3,000万円以下

損益通算や繰越控除の対象になるのは、上記の①「譲渡損失」または②「売却代金-ローンの残債」のいずれか少ない方の金額です。

5.計算例

平成23年7月に5,000万円で購入したマンションを、平成29年12月に3,000万円で売却し、ローンの残高が売買契約締結前日において5,000万円残っていた。
各年の所得は800万円、所得控除190万円、所得税は79万2,500円

住宅譲渡損失の計算

3,000万円(売却代金)-5,000万円-100万円=2,100万円
(建物の減価償却費は、計算簡略化のためここでは考慮していません。)

住宅譲渡損失の計算

3,000万円-5,000万円-100万円=-2,100万円
これが、住宅譲渡損失(①の数字)となります。
売却代金-ローン残高の数値(②の数字)は、
3,000万円-5,000万円=-2,000万円となります。
損益通算・繰越控除対象となる、①と②のうちで損失の少ない方の金額は、
②の売却代金-ローン残高となるので、-2,000万円です。

平成29年度の所得税

800万円-2,000万円=-1,200万円
マイナスになるので、この年の所得税は、79万2,500円全額が還付されます。

平成30年度の所得税

800万円-1,200万円=-400万円
やはりマイナスになるので、所得税は79万2,500円全額が還付されます。

平成31年度の所得税

800万円-400万円=400万円
ここから190万円の所得控除があるので、課税対象所得は210万円となります。
その場合の所得税は11万2,500円となりますので、この年は、68万円の所得税が還付されます。

 

不動産税金ガイドの内容について
当サイトの内容は、平成29年4月1日現在の法令にもとづいて作成したものです。
年度途中に新税制が成立したり、税制等が変更になったり、通達により詳細が決まったりするケースがありますのでご了承ください。
税金は複雑な問題もありますので、ケースによっては税務署や税理士など専門家にご相談ください。