売却時の税金

併用住宅を売却してアパートを取得する場合

 
<質問>
20年前に取得した、店舗兼住宅を2億円で売却して、1億円でマンションを購入し、私は娘と同居する予定です。
売却した物件は、1階は店舗、2階を住宅として使っていました。
店舗と住宅の面積の割合は50%ずつです。
譲渡所得税はどのくらいかかりますか?なるべく安くする方法はありますか?

1.居住用の部分と事業用の部分に分けて税金を計算する

この事案のように、店舗兼住宅を売却したときにかかる税金を計算する場合には、居住用の部分と事業用の部分に分けます。
売却価額は、事業用部分が1億円、居住用部分が1億円となります。

まず、居住用部分には、居住用不動産の3,000万円の特別控除と低率分離課税の適用があります。
事業用部分である1億円については、買換え制度に対する特例を利用することができます。

具体的には、10年を超えて所有してきた事業用資産を売却した際、80%の分まで課税の繰り延べが認められています。
既成市街地等内の事業用資産(店舗以外)を売却して買い換える場合には、対象地域が3大都市圏の近郊整備地帯及び政令指定都市の市街化区域に限られます。

2-1.居住用部分

10年を超えて所有しているので、低率分離課税を適用します。
譲渡所得は、取得費5%、売却手数料3%として計算します。
譲渡所得=1億円-1億円×0.05-1億円×0.03-3,000万円=6,200万円

所得税と住民税は、以下の通りです。
6,000万円×(所得税10.21%+住民税4%)=85万2,600円
200万円×(所得税15.315%+住民税5%)=40万6,300円
合計125万8,900円

2-2.事業用部分

譲渡所得は、以下の通りです。
1億円-(1億円×0.8)×(1-0.05-0.03)=1,840万円
所得税と住民税は、以下の通りです。
1,840万円×(所得税15.315%+住民税5%)=3,737,960円

以上より、居住用部分と事業用部分の税額合計は、以下の通りです。
1,258,900+3,737,960円=4,996,860円

3.事業用資産の買換え特例について

以下では、事業用資産の買換え特例について、説明をします。

3-1.10年超所有していた場合の買換え特例(場所の制約がないケース)

この特例が適用されるのは、以下のようなケースです。

  • 事業用不動産を売却する年の1月1日において10年を超えて所有している
  • 土地は300m²以上、建物は機械や装置ではないことが必要

ただし、地域再生法の集中地域以外の場所から集中地域へ買い換える場合には75%、東京23区内への買換えの場合には70%、その他の買換えの場合には80%が限度となります。
※地域再生法の集中地域とは、以下の地域を指します。

  • 首都圏既成市街地
  • 首都圏近郊整備地帯
  • 近畿圏既成都市区域
  • 名古屋市内の特定の区域

地域再生法の改正前までの売却の場合には、80%が適用されます。

3-2.既成市街地等内から外へ買い換えるケース

既成市街地内の事業用資産を他地域(3大都市圏の近郊整備地帯及び政令指定都市の市街化区域)のものへ買い換えると、80%の課税について、繰り延べが認められます。
適用を受けるためには、売却する年の1月1日において、10年を超えてその資産を所有してきたことが必要です。

また、この特例の適用期間は、平成32年12月31日までとなっています。

 

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